【最新版】製造業オーナー必見!「事業承継ガイドライン」を徹底解説

事業承継とは?
事業承継とは、文字通り「事業」そのものを「承継」する取り組みです。 後継者が事業承継後に安定した経営を行うためには、現経営者が培ってきたあらゆる経営資源を承継する必要があります。 後継者に承継すべき経営資源は、「人(経営)」、「資産」、「知的資産」の3要素に大別されます。
事業承継の重要性
中小企業・小規模事業者は、雇用の担い手、多様な技術・技能の担い手として、我が国の経済・社会において重要な役割を果たしています。 将来にわたり、その活力を維持していくためには、円滑な事業承継によって事業価値をしっかりと次世代に引き継ぎ、事業活動の活性化を実現することが不可欠です。
しかし、事業承継の準備が十分でなかったために、円滑な事業承継ができずに不本意な結果になってしまう例もあります。
事業承継ガイドライン
中小企業庁が発行する「事業承継ガイドライン」は、中小企業・小規模事業者の経営者の方に事業承継の課題を知っていただくことを目的としています。
このガイドラインでは、事業承継に関する最新の実務慣行等を反映し、より詳細な説明をするなど、中小企業・小規模事業者における円滑な事業承継のために必要な取組、活用すべきツール、注意すべきポイント等を紹介しています。

中小企業庁が公表した「事業承継ガイドライン(第3版)令和4年3月改訂」の内容を参考に記事化しております。
事業承継の5つのステップ
事業承継ガイドラインでは、事業承継に向けて5つのステップを踏むべきとしています。
事業承継は、後継者教育などに時間がかかるため、経営者が60歳になったら準備を始めましょう。60歳を超えている場合は、すぐにでも支援機関に相談し、準備に取り掛かるべきです。
相談しにくい問題
事業承継は家族内の問題と捉えられがちで、外部に相談しにくいという経営者もいます。しかし、準備が遅れると、問題が深刻化する可能性があります。
支援機関の役割
支援機関は、専門的な知識や経験を必要とする事業承継の相談に対し、積極的に対応する必要があります。国や自治体も、経営者が事業承継の準備に取り組むきっかけを提供することが重要です。
プッシュ型の支援
全都道府県で事業承継ネットワークを構築し、「事業承継診断」をプッシュ型で実施しています。これは、事業承継の準備状況を確認し、次に行うべきことを提案するものです。
事業承継をスムーズに行うには、まず自社の経営状況や課題を把握することが重要です。
現状把握のポイント
- 業界動向等の情報収集
- 貸借対照表に計上されない知的資産等の把握
- 会社と個人の関係の明確化
- 正確な決算処理
- 保有する自社株式の確認と株価評価
- 商品毎の売上・費用分析
- 知的資産の認識
- 業界内における位置付けの客観評価
- 後継者候補の有無、能力、適性等の確認
- 親族内承継の場合の相続に関する検討
見える化のツール
- 中小企業の会計に関する指針
- 中小企業の会計に関する基本要領
- ローカルベンチマーク
- 事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)
- 経営デザインシート
これらのツールを活用することで、自社の強みや弱みを把握し、事業承継後の成長につなげることが重要です。
事業承継は、単に事業を引き継ぐだけでなく、次世代に発展させるための絶好の機会です。後継者候補が事業を継ぎたくなるような魅力的な状態にするために、現経営者は積極的に経営改善に取り組むべきです。
磨き上げのポイント
- 本業の競争力強化: 強みを伸ばし、弱みを改善することで、持続的な成長を目指します。
- シェアの高い商品・サービスの拡充
- 技術力向上
- 人材育成
- 事業リスクの分散
- 「経営力向上計画」の策定・実行
- 経営体制の総点検: 後継者が円滑に事業運営できるよう、社内体制を見直します。
- 社内コミュニケーションの活性化
- 役割分担の明確化
- 業務効率化
- 不要な資産の処分
- 財務経営力の強化: タイムリーで正確な財務状況の把握は、適切な経営判断に繋がり、対外的な信用力向上にも役立ちます。
- 業績悪化時の対応: 事業承継のタイミングは事業再生の契機と捉え、必要があれば早期に専門家へ相談し、適切な再生の道を選びましょう。
- 法的整理 (民事再生、会社更生等)
- 私的整理 (特定調停、中小企業再生支援協議会等)
磨き上げの対象
業績や経費だけでなく、商品・ブランドイメージ、顧客、金融機関・株主との関係、人材、知的財産権、ノウハウ、法令遵守体制など、多岐に渡ります。
専門家の活用
磨き上げは多岐に渡るため、専門家(士業、金融機関等)の助言を得ながら効率的に進めることが重要です。
経営者保証に関するガイドラインを活用することで、保証債務の負担軽減を図れる場合もあるため、専門家への相談時に確認しましょう。
事業承継を成功させるためには、計画の策定が重要です。
事業承継計画とは
会社の将来を見据え、いつ、どのように、何を、誰に承継するかを具体的に決めた計画です。
計画策定の重要性
- 後継者や親族と共同で作成することで、共通認識を持つことができます。
- 取引先、従業員、金融機関などと計画を共有することで、協力を得やすくなります。
- 後継者や従業員が事業承継に向けて必要な準備を行うことができます。
計画策定の前に
- 経営理念の承継:会社の理念や経営者の想いを明確化し、後継者や従業員と共有することが重要です。
- 創業からの振り返り:創業の経緯や変遷を振り返ることで、事業承継の本質を理解することができます。
事業承継計画の策定
- 中長期目標の設定:
- 10年後を見据え、事業の方向性や目標を設定します。
- 後継者とともに目標を設定し、事業承継後の成長を促進します。
- 「経営デザインシート」などのツールを活用することもできます。
- 事業承継計画の策定:
- 資産・経営の承継の時期を盛り込んだ計画を策定します。
- 策定プロセスにおいて、関係者間で意識の共有化を図ることが重要です。
- 後継者が決まっている場合は、後継者も計画策定に参画します。
- ステップ2で把握した自社の現状を踏まえることが重要です。
- 具体的な計画のイメージは、ひな形・記入例を参考にします。
具体的な策定プロセス
- 自社の現状分析
- 今後の環境変化の予測と対応策・課題の検討
- 事業承継の時期等を盛り込んだ事業の方向性の検討
- 具体的な目標の設定
- 円滑な事業承継に向けた課題の整理
事業承継計画は、計画書を作成すること自体が目的ではなく、策定プロセスを通じて関係者間で意識を共有し、円滑な事業承継を実現することに意味があります。
後継者がいない場合、M&Aによって社外の第三者に事業を引き継ぐことができます。M&Aは、以下のステップで進みます。
- 意思決定: M&Aを行うかどうかの意思決定を行います。
- 仲介者・FAの選定: M&Aを支援する仲介者・FAを選定します。
- バリュエーション: 企業・事業の価値を評価します。
- 譲受側の選定: M&Aの相手となる企業を選定します。
- 交渉: 譲渡側と譲受側で条件などを交渉します。
- 基本合意の締結: 交渉の結果に基づき、基本合意を締結します。
- デュー・ディリジェンス: 譲受側が譲渡側の企業を調査します。
- 最終契約の締結: デュー・ディリジェンスの結果を踏まえ、最終契約を締結します。
- クロージング: 株式や事業の譲渡、譲渡代金の支払などを行います。
M&Aの詳細な手続きについては、「中小M&Aガイドライン」を参照してください。
これまでのステップで把握した課題を解決しながら、事業承継計画やM&A手続きに従って、資産の移転や経営権の移譲を実行します。
実行段階のポイント
- 状況の変化に合わせて計画を柔軟に変更する
- 税負担や法的手続きが発生するため、弁護士、税理士、公認会計士等の専門家の協力を得ながら実行する
事業承継は、計画通りに進まないことも想定されます。そのため、状況に応じて計画を修正しながら、専門家のサポートを受け、円滑な事業承継を目指しましょう。
事業承継の類型
事業承継の類型は、親族内承継、従業員承継、社外への引継ぎ(M&A)の3つに区分されます。
現経営者の子をはじめとした親族に承継させる方法です。 一般的に他の方法と比べて、内外の関係者から心情的に受け入れられやすい、後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能、相続等により財産や株式を後継者に移転できるため所有と経営の一体的な承継が期待できるといったメリットがあります。
まとめ
事業承継は、企業の存続、雇用の維持、地域経済の活性化に不可欠です。 本記事で紹介した事業承継ガイドラインを参考に、早めの準備を始めましょう。
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