中小製造業の事業計画書|金融機関に伝わる数値計画の作り方

設備を入れたい。受注を増やしたい。金融機関へ説明する事業計画書が必要になったものの、売上の目標と現場の状況、毎月のお金の動きがうまくつながらない。そんなときは、文章を整える前に、数字を支える条件を一つずつ確かめてみましょう。
当社では、まず支払と入金を押さえ、受注の前提、生産能力、採算、投資する時期の順に整理することを勧めます。金融機関へ数値の根拠を説明するとともに、社内でも担当と次の判断を決められる計画を目指すためです。この記事では、その進め方を具体化します。
POINT|数字・根拠・次の確認を一組にする。目標を置いたら、何を確認できていて、何が未確認か、誰がいつ確かめるかを添えます。計画の作成と、融資や補助金の審査結果は別の判断です。
当社が最初に見るのは、毎月の支払と計画の前提
最初に、何のために、いつまでに計画を作るかを決めます。設備更新、受注拡大、既存事業の立て直しでは、確認したいことが違います。提出先に指定の書式や期間がある場合は、その条件を先に確かめてください。
私たちが勧めるのは、直近の実績と、これから動かす予定を分けて並べることです。月次の試算表、受注と出荷の記録、入金・支払予定、既存借入の返済予定、投資の見積もりなどを社内で照合します。先に支払うお金があるなら、売上が入るまでの時期も含めて見通します。
| 最初の確認 | 照合する内容 |
|---|---|
| いつ支払うか | 材料・外注・人件費・税・設備代金・既存返済の予定。 |
| いつ入るか | 取引条件に基づく回収予定。決まった入金と、未確定の調達予定を分ける。 |
| 何を変えるか | 対象の製品や工程、増やす受注、設備・人員の変更範囲。 |
| 何が未確認か | 注文・価格・生産条件・見積もり・支払条件など、次に確かめる前提。 |
手元にない数字を、つじつまが合うように埋める必要はありません。まず未確認の理由と確認先を残します。経営者だけで抱えず、営業・現場・経理など、実際の情報を確かめられる人へ役割を分ける進め方です。
売上計画は、受注・数量・単価・生産能力までつなぐ
STEP 1|受注の状態と、数量・単価の前提を分ける
売上の見通しは、製品群や取引のまとまりごとに、販売数量と単価へ分けます。その際、確定した注文、内示、見積もり中、これから提案する分を区別しておくと、前提が変わったときに見直す場所を追えます。
説明用の架空例として、同じ製品を月300個、1個3,000円で販売する計画を考えます。このとき売上見込みは90万円です。ただし、次のように分けておけば、90万円のすべてが確定した注文ではないことを説明できます。数値は計算のための仮定で、当社や顧客の実績ではありません。
| 受注の状態という仮定 | 数量と単価 | 売上の見込み |
|---|---|---|
| 確定注文がある分 | 200個 × 3,000円 | 60万円 |
| 見積もり中で未確定の分 | 100個 × 3,000円 | 30万円 |
単価の改定や追加受注を計画へ入れるなら、先方とどこまで話が進んでいるか、いつから適用する見込みかも記します。未確定分が入らなかった場合には、売上だけでなく材料の購入、外注、投資の予定も見直します。
STEP 2|販売できる数量を、現場の条件と照合する
次に、その数量を予定した時期に供給できるかを現場と確認します。設備の最大能力だけでなく、作業する人、段取り、他製品との工程の取り合い、外注先、材料、検査と出荷までを含めて見ます。
機械が増えても、受注や作業条件がそろうとは限りません。当社では、どの工程が数量を制約しているか、改善して確かめられる範囲はどこかを先に整理することを勧めます。まだ試していない加工時間や歩留まりは、確認前の前提として残してください。
利益計画と資金計画を分け、投資と返済の時期を合わせる
費用は、増える条件と計上する範囲をそろえる
売上の次は、材料費・外注費・人件費・設備関連費などを、過去の実績と今後の見積もりに照らして整理します。受注量によって増えるものと、一定の範囲では大きく変わらないものを、管理上どのように分けるかも決めておきます。
たとえば、数量増加を入れたのに材料や外注費が以前のまま、人を増やす予定なのに採用や教育の期間が抜けている、といった不整合を探します。改善による削減額は、何を変え、いつから、どの費用に反映するかまで分けて考えます。
作業時間を短縮する計画は、実際の支出がいくら変わるかまで確認します。空いた時間を何に使うか、残業・外注・人員配置のどの条件が変わるかを整理し、短縮した時間をそのまま人件費の削減額へ置き換えないようにします。
材料費や人件費などを一律に固定費と決めつけず、操業条件と自社の管理方法を確かめます。利益のどの段階を示すかも明記し、同じ費用の二重計上や抜けがないかを経理担当者等と照合してください。
入出金は月ごとに、設備代金と返済も入れて確認する
利益と現預金の残高は、同じ数字ではありません。売上を計上する時期と回収する時期、費用を計上する時期と支払う時期を分け、月ごとの入出金へ落とし込みます。
資金の計画では、月初の残高にその月の実際の入金を足し、実際の出金を差し引いて月末残高を確かめ、翌月へ繰り越します。売掛金の回収、買掛金の支払、在庫を増やすための購入、税の支払、設備代金、借入の入金と返済を、同じ月の表で照合する進め方です。
設備購入代金の支払、減価償却費、借入の元金返済と利息は、それぞれの扱いを確認します。設備代金の支払を資金計画へ置くことと、減価償却費を利益計画へ反映することを分け、同じ表で二重に差し引かないようにします。営業利益や利益に減価償却費を加えた金額だけを、そのまま返済に使える金額とはせず、既存返済、税の支払、仕入れや回収の時期も含めて照合してください。
設備投資と資金調達の、金額・時期をそろえる
設備投資は本体価格に加え、付帯工事、設置、教育や試作など、立上げまでに実際に必要な費用と支払日を見積もりで確認します。新設備の稼働、受注、回収が遅れた場合も比較し、既存借入と新規借入の返済条件を契約・提示条件で確かめます。未承認の融資や補助金は、確定した入金と混ぜません。会計・税務の処理や調達条件の個別判断は、関係する専門家・金融機関へ確認してください。
POINT|先に判断したいのは、どの時点で条件がそろわなくなるか。入金が遅れる、受注が減る、立上げが延びる場合を分けて置き、必要な確認と対応の順番を考えます。
担当・期限・完了条件を決め、数値を行動へつなぐ
数字の根拠をそろえたら、実行する人と確認する人を決めます。当社では「売上を増やす」「原価を下げる」という目標を、そのまま担当者の仕事にせず、確認できる一つの行動へ分けることを勧めます。
| 確認項目・担当の例 | 資料と未確定の前提 | 次の確認・完了条件の例 |
|---|---|---|
| 受注と単価:営業 | 注文や見積もり、回答時点。未確定の数量・価格・時期。 | 相手との確認予定を決め、受注の状態と見込みの理由を更新する。 |
| 生産条件:現場 | 工程・人員・段取り等の記録。未検証の生産条件。 | 制約のある工程と、必要な人・時間・承認条件を示す。 |
| 入出金と返済:経理 | 回収・支払予定、返済予定、投資見積もり。未確定の資金。 | 同じ期間で照合し、資金が不足する見込みの時点と確認先を示す。 |
| 投資と実行:経営者・承認者 | 見積もりと各担当の確認結果。判断待ちの条件。 | 進める条件・保留する条件・次の判断日を決める。 |
役割は兼任でも構いません。誰が、何を、いつまでに確かめ、どの資料で完了を確認するかを決めます。見積もりの取得、試行の実施、正式な承認は、それぞれ別の状態として扱ってください。
現場改善を試す場合も、設備操作や品質判定の権限、教育、社内承認が必要な範囲を確認します。事業計画を作ったことを、機械の改造や配置変更、出荷判定などの承認と同じには扱いません。
計画と実績の差から、次に直す前提を決める
提出した後も、同じ期間の計画と実績を並べて確かめます。私たちが勧めるのは、金額の差だけで評価せず、数量、単価、材料や外注の条件、稼働の状況、回収と支払の時期へ分けて確認する方法です。
- 売上が違ったときは、数量・単価・受注や出荷の時期のどこが変わったか。
- 採算が違ったときは、費用の見積もり・使用量・追加作業・固定的な負担のどこを見直すか。
- 現預金が違ったときは、回収・支払・設備投資・返済の予定に何が起きたか。
- 実行できなかったときは、担当・時間・承認・前提条件のどこがそろわなかったか。
元の計画を残し、何を理由に、どの前提を、いつから変えたかを記録します。未確認だった条件を実績として扱わず、今回分かったことと次に確認することを分けます。見直しの頻度は自社の資金と業務の状況に合わせ、重要な変化があれば予定を待たずに確認してください。
金融機関へ説明する前に、根拠と未確認事項をそろえる
計画書へまとめるときは、会社が何をつくり、どこを変えたいのかを短く示したうえで、売上・費用・資金の前提と行動をつなぎます。説明に使う数値には、参照する実績、見積もり、取引条件などの確認日を添え、未確定の前提も区別してください。
提出先へは、必要な書式、対象期間、添付資料、未確定事項の扱いを確認します。社内で整理した説明と提出用の指定項目を照合し、足りないものは、確認する担当と提出に必要な時点を決めます。
本文を読み返す際は、受注の見込みと生産できる数量が合うか、利益と資金の計画が同じ前提でつながるか、投資を進める条件が分かるかを確かめます。資料を整えたことを、融資や採択の保証にはしません。
まとめ:まず一つの計画を、確認できる前提へ分ける
まずは、予定する支払と入金、売上の数量と単価、現場でつくれる条件を同じ期間で並べてみてください。当社では、その間にある未確認の前提を見つけ、担当と次の確認日を決めるところから計画を具体化することを勧めます。
社内で整理できる範囲は自社で進め、数値と現場の行動のつなぎ方、確認の順番、見直し方に支援が必要なら、事業計画の整理と支援範囲を相談するからお知らせください。書籍の購入や契約前の有料診断は相談の条件ではありません。取扱いの合意前に、決算書・顧客情報・図面などの機密資料を送らないでください。
参考資料
